当院では、うつ病、双極性感情障害(躁うつ病)、適応障害、不眠症・睡眠障害、不安障害・強迫性障害、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、統合失調症などの病気の治療を行っています。
もちろん上記の病気以外の方もいらっしゃいますので、気になる症状があればお気軽にご相談ください。ご本人が当院未受診の場合、自費でご家族だけのご相談も承っております。
当院は中学生以上の方を治療対象としていますが、18歳未満の方は児童精神科を標榜する医療機関への受診をお勧めすることがあります。予めご了承ください。
うつ病・双極性感情障害(躁うつ病)
うつ病
「集中力が続かない」「寝ても疲れがとれない」「何もやる気が起きない」などの症状がうつ病の始まりかもしれません。多くみられる症状として以下のようなものがあります。
- 毎日のように気分が落ち込む
- 好きだったことや趣味に対して興味がなくなる
- 食べられない、あるいは食べすぎてしまう
- 眠れない、あるいは眠りすぎてしまう
- 身体の節々に痛みやだるさを感じる
- 不安が頭から離れず、堂々巡りの考えをする
- 仕事や家事に集中できない
- 疲れやすく、元気が出ない
- イライラする
- 自分自身を責め、「価値がない」と感じる
- 消えてしまいたくなる
上記以外にも様々な症状があります。長時間の労働や緊張を強いられる環境で発症のリスクが高まるといわれていますが、発症のメカニズムについてまだ完全には解明しておりません。しかし薬物療法や心理療法、環境の調整などが有効だと統計的に明らかになっています。最近では心筋梗塞や糖尿病などの身体疾患への影響も指摘されています。お気軽にご相談ください。
双極性感情障害(躁うつ病)
うつ病と似たような症状を呈す主な病気として適応障害、双極性感情障害(躁うつ病)があります。適応障害は仕事や学校などの生活環境においてうまく適応することができず、うつ病と似たような症状を呈します。しかし、原因がはっきりしているので、その原因を取り除けば症状は徐々に改善していくことが多いです。「精神科は薬だけ」と思われがちですが、環境調整のお手伝いも可能です。
双極性感情障害は、うつ病と似たような症状を呈す時期のほかに、気分が高揚する躁状態の時期が特徴的です。躁状態でみられる症状として以下のようなものがあります。
- 気分が高揚して爽快である
- いつもより上機嫌でおしゃべりになる
- いい考えが次から次へと浮かぶ
- イライラして攻撃的になる
- 多額の買い物をしてしまう
- 根拠のない自信がある
- 眠らなくても元気である
躁状態が持続すると仕事や人間関係に深刻な障害を来し、社会復帰が困難になってきます。またうつ状態のときにはうつ病と症状がよく似ているため、しばしばうつ病と間違われます。ただ治療や病気の成り立ちはうつ病とは異なります。双極性感情障害は上手にコントロールすることを目標にします。きちんと治療して、病気とうまく付き合っていくことが大切です。治療を継続することで日常生活への障害を少なくすることができます。
不眠症・睡眠障害
不眠症・睡眠障害は「寝付きが悪い」「途中で目が覚める」「昼間に眠気を感じる」「眠った気がしない」など様々であり、治療もそれぞれで異なります。多くは睡眠衛生指導による生活習慣の改善や薬物療法で改善します。「薬は極力使いたくない」という方には睡眠衛生指導を中心とした治療も可能です。
少し前からよくニュースになる病気として睡眠時無呼吸症候群(SAS)があります。いびきや中途覚醒が特徴的です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の場合、しばしば薬物療法が逆効果になります。簡易型検査装置を用いた検査の結果、精査・治療が必要な場合には連携医療機関へご紹介します。
不安障害・強迫性障害
不安障害はパニック障害、社交不安障害(社会不安障害)、全般性不安障害などといったものに分類されます。
パニック障害は、パニック発作と呼ばれる発作を繰り返し、将来のパニック発作に対して過度に不安(予期不安)が強くなる病気です。パニック発作とは急な恐怖、不安に襲われ、過呼吸、めまい、動悸、発汗といった症状が現れる発作のことで、パニック障害以外の精神疾患でもみられます。パニック発作自体は短時間で治まり、身体的な検査をしても異常を認めません。しかし、パニック発作が落ち着いたあとも予期不安が続き、日常生活に支障を来します。
社交不安障害(社会不安障害)とは、いわゆるあがり症です。会議での発言や人前で何かをすることに強い苦痛と緊張を感じます。
全般性不安障害とは漠然とした不安や心配が長期に渡って続く病気です。
これらの不安障害は薬物療法、認知行動療法などの心理療法を組み合わせて治療をすることが多いです。デイケアや訪問看護などが有効なこともあります。早めにご相談いただければ日常生活への影響が大きくなる前に治療できます。お気軽にご相談ください。
強迫性障害は無意味だと認識している行動をやめられず、頭の中を病的な思考に支配される病気です。よく知られている症状として、「繰り返す手洗いに時間を費やしてしまう」という不潔恐怖・洗浄強迫や、「鍵の閉め忘れを確認しているうちに外出できなくなった」という確認強迫があります。他に、ラッキーナンバーや願掛けなどの縁起にこだわる、出来事を何度も思い出しては頭の中で確認する、など様々なタイプがあります。以前は不安障害のひとつとされていましたが、最近は不安障害とは独立した病気と考えられるようになってきました。
世界保健機関(WHO)は生活上の機能障害を引き起こす10大疾患の一つに挙げています。決して稀な疾患ではなく、人口のおよそ2%以上が罹っているという報告があります。
原因ははっきりと分かっていませんが、どうすれば症状が改善するかはわかってきています。治療は薬物療法と行動療法を組み合わせて行います。お気軽にご相談ください。
自閉スペクトラム症(ASD)
広汎性発達障害、アスペルガー症候群とも呼ばれていました。発達障害のなかのひとつであり、他の発達障害との合併も多くみられます。障害というより特性と捉えたがよいでしょう。特定の分野で高い能力を発揮することがある一方で、人間関係がうまく築けない、集団生活が苦手、会話が噛み合わない、などの生きづらさがあります。うつ病や依存症などの他の精神疾患に罹患する方も少なくありません。適切な心理社会的療法、家族教育、環境調整により、他の精神疾患の合併を抑え、日常生活の困難を少なくすることができます。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
これも発達障害のなかのひとつです。「忘れ物が多い」「よく考えずに行動してしまう」「じっとしていられない」「集中が持続しない」などの不注意、衝動性、多動が特徴です。一方で興味関心のある分野に集中しすぎてしまい周囲の変化に気づかないことがあります。多くの方は、成長に伴い、衝動性、多動が幾分か和らぎ、不注意が残ります。このような特性のため、学業や仕事に支障を来し、うつ病などの他の精神疾患に罹患することがあります。
自閉スペクトラム症と同じく、心理社会的療法、環境調整が有効です。また効果が実証されている薬剤がいくつかあります。適切な治療により日常生活の困難を少なくすることができます。
統合失調症
統合失調症は非常に多彩な症状を示します。代表的な症状として、幻聴、妄想、まとまりのない言動といったものがあります。人口の0.5〜1%が罹患するといわれています。薬物療法、心理社会的療法、環境調整が有効です。
昔は薬物療法の副作用に苦しむ方が多くいらっしゃいました。しかしここ20〜30年で多くの新薬が開発され、薬物療法の副作用に苦しむ方が以前より少なくなりました。当院ではできるだけ副作用の少ない処方を心がけています。
認知症
認知症はアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などに分類され、それぞれに治療法や対処法が異なります。認知症初期は、加齢による「もの忘れ」となかなか区別がつきにくいですが、いくつかの違いがあります。多くの「もの忘れ」は忘れていることに自覚があり、日常生活の影響は軽微です。一方、例えば多くのアルツハイマー型認知症の場合、忘れている自覚がありません。そのため日常生活に支障を来します。
受診後は問診、神経心理学的検査により状態を確認します。必要であれば連携医療機関にてさらなる検査を行います。薬物療法、環境調整などによりご本人の苦痛軽減、ご家族の負担軽減を目指します。